もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)は、脳内に円形に広がる動脈「ウィリス動脈輪(大脳動脈輪)」が途中で狭窄・閉塞し、その先への血流が悪化する病気です。症状の進行により、脳卒中(脳梗塞、脳出血など)が起こりやすくなるほか、一過性脳虚血発作(TIA、Transient Ischemic Attack。後述)を生じます。
病気の発生原因が明確でなく、難病指定(後述)されていますが、対処法は確立されており、外科手術で改善します。手術は標準難易度で、手術後は通常の日常生活が送れる場合がほとんどです。
もやもや病の症状
もやもや病は、大きく分けて、「発作が起こる」「脳出血が起こる」「無症状」の3タイプがあります。以下に詳しく説明します。
発作が起こる
頭痛、てんかん、脱力発作、しびれ、失語症などの一過性脳虚血発作が起こり気付くタイプです。これは、右脳または左脳の特定の部位への血流が一時的に不足することが原因です。発作のタイミングは、運動等で強い負荷がかかった時、飲酒した時、暑い中で歩いた時など、いろいろな場合がありますが、症状が進んでいるため、手術を勧められます。
脳出血が起こる
脳出血が起こると、意識障害、麻痺、知覚異常、けいれん等が起こります。見た目に分かる異常のため、救急車で運ばれることが多く、すぐに入院となります。症状が落ち着いた後、次の脳出血を予防するため、早いタイミングでの手術を勧められます。
無症状
無症状の場合には、他と異なり、内科的な治療をしながら病状を観察することがあります。この場合には、抗血小板薬(バイアスピリンなど「血液をサラサラにする薬」)や抗けいれん薬などを服用しながら定期的に経過を見て、病状が進むと手術を勧められます。
もやもや病の診断
もやもや病の診断には、臨床所見と画像診断を使用します。画像診断では、MRI/MRA(Magnetic Resonance Imaging/Angiography)を使用する場合と脳血管造影を使用する場合があります。ある程度病状が進行している場合には問診とMRIだけで確定診断が得られます。
もやもや病の医療費助成制度
もやもや病は指定難病であるため、確定診断がなされると、医療費助成を受けることができます。この助成は、月の自己負担額が手術も含め0~3万円になる制度です。申請当日から有効なため、もやもや病と疑われた場合、できるだけ早く申請することで医療費の自己負担額が減少します。
申請には、難病指定医(主に大学病院等)による文書が必要で、住所地の市役所・区役所の福祉課で申請の書式を入手する必要があります。申請書は少し複雑なため、不明点は福祉課に聞くと教えてくれます。
申請後、認定されて「医療受給者証」が届くまで約3か月かかりますが、助成は申請日にさかのぼって有効なため、受給者証が届くまでに支払った医療費は精算され、銀行送金で還付(返金)が受けられます。「医療受給者証」の到着後は、これを病院で提示することで、自己負担額のみが請求されます。
【リンク】
公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター もやもや病(指定難病22)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/47
※病気の内容が分かりやすく書かれています。
東京女子医科大学 脳神経外科 もやもや病
https://www.twmu.ac.jp/NIJ/column/CVA/moyamoya.html
※画像が多く、実際のMRI/MRAの写真もあります。直接バイパス術を中心に実施しています。
東京医科歯科大学 脳神経外科 もやもや病
https://www.tmd.ac.jp/med/nsrg/forPatients/taishou02.html
※写真や図解が多く、網羅的な情報が掲載されています。間接バイパス術を中心に実施しています。
国立研究開発法人 国立循環器病研究センター もやもや病
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/moyamoya/
※手術前後の流れなどが掲載されています。直接バイパス術を中心に実施しています。