2025年6月22日の「もやもや病患者の妊娠、出産と遺伝の医療講演会」で3人の患者さんから体験談が寄せられました。その時の体験談を、一部編集してご紹介します。
(30代女性)
私は大学生のときに脳出血を起こし、「もやもや病」であることがわかりました。言語神経に後遺症が残り、今でもときどき言葉がうまく出てこないことがありますが、日常生活は自立して送れています。
妊娠・出産については、病気の影響が不安で、早い時期から少しずつ準備を始めていました。結婚後に妊活をスタートし、体調を考慮してフルタイム勤務からパート勤務に切り替えました。
妊娠初期は、つわりと猛暑が重なり体調を崩してしまい、点滴のために通院していた病院を受診したところ、「もやもや病」の既往歴を確認した医師の判断ですぐに入院となりました。脱水が引き金で脳血流に異常が起きることを避けるためだったようです。入院後は比較的早く落ち着き、大きな合併症もなく過ごすことができました。
分娩方法は、以前の婦人科手術歴や前置胎盤のため計画帝王切開になりました。麻酔方法については、脳外科と産科で何度も相談を重ね、局所麻酔を選びました。出産時には血圧の急変に備えて手首の動脈から点滴が入りました。動脈への処置は少し怖さもありましたが、大きな痛みはなく、無事に終えることができました。
出産直後には、事前に準備していた自己血の輸血を受けました。幸いなことに、脳出血や妊娠高血圧などの合併症も起こらず、母子ともに健康で出産を終えることができました。MFICU(母体胎児集中治療室)にも入りましたが、状態が安定していたため比較的早く一般病棟に戻れました。
ただ、出産後の授乳期は想像以上に大変でした。授乳や搾乳をすると、血が頭に巡らないような強い疲労感に襲われました。新生児の育児は休む間もなく、毎日が体力との勝負だったと思います。
子どもが園に通うようになってからは、専業主婦として過ごせるようになり、体力的には余裕が出てきました。ただ、今でも毎年6~9月の暑い時期は、めまいや立ちくらみが起きやすくなります。
妊娠前や妊娠中は不安が多く、いわゆる「マタニティライフ」を楽しむ余裕はありませんでしたが、ほとんどのことが杞憂に終わってくれました。主治医や患者会など、信頼できる人たちとつながって相談できたこと、そして自分なりの準備ができたことは、とても心強かったです。
この体験が、同じような立場の方の参考になれば幸いです。

(40代女性)
私は30代で第一子を出産し、40代コロナ禍で第二子を出産しました。
4才と6才の時に東京と大阪で手術をうけ、術後は良好で薬の服用もなく、後遺症もなく元気に子供を産みました。現在は東京に住んでいます。
出産は子供の頃手術を受けた大阪の病院では、相談は難しく、住んでいる地域の総合病院の産婦人科では、もやもや病の患者さんの出産は受け入れられないとのことだったので、もやの会の会報を読み返し、もやもや病の患者さんの受け入れの多い東京医科歯科大学病院(現在、東京科学大学病院)の脳外科と産婦人科に決めました。
出産方法は二人とも帝王切開でした。帝王切開は手術なのでパートナーの立ち合い出産はできませんが、予定帝王切開なのでお子さんの誕生日を決めてあげることができます。そして術後は、一日起き上がれません。安静にして翌日の、歩行リハビリと新生児のお世話に備えました。一人目の時は術後の翌日は良好で、看護師さんから驚かれるほどでしたが、二人目の時は術後に皮下出血があり一晩中、痛くて眠れないほどでした。
出産・育児で大変なことは、健常者ももやもや病の患者の方も同じだと思います。
大切なのは、心身ともに辛かったり、困った時、イライラした時に「助けて!」といえる人や場所、病院を早めに見つけ出しておくと良いと思います。
私はパートナーや、両親をはじめ、友人、出産を相談できる脳外科、産婦人科、産後は内科、小児科、保健センター、家庭支援センター、児童館、保育園、幼稚園、発達支援センター、小学校などを利用しました。
安心して話ができて、体もメンテナンスできる所があればいいと思います。
もやの会もその一つだと思います。
因みに育児本やSNS、色々な周りからのアドバイスはすべて受け入れるのではなく、適度に参考資料として聞くようにした方が、気持ちが楽です(笑)育児に正解はありません。そして、休めるときは休む。これが一番大事かもしれません。
出産前では考えられないくらい新生児は夜寝なくてママが眠れない時期もあります。でも大丈夫です。ずっとじゃないから。
子供はとてもかわいく、素直な時もあれば、厄介で予定通りにいかず、手を焼くこともたくさんあります。子育ての悩みの種も子供の年齢によって質が変わり、子供自身のプライドや考えがあるので毎日親子で奮闘している方が多いと思います。
だからこそ一日の終わりに、無事に子供とすごせたら120点満点とご自身とお子さんを褒めてください。
私もこれからも毎日、無理しすぎず育児を頑張りたいと思います。 会の皆様もお体には気を付けて、楽しく充実した毎日が過ごせますようお祈りいたします。

(50代女性)
もやもや病が発覚したのは先月(2025年5月)ですが、医師によると10年前は確実に発症していた。20年前も発症していた可能性が高い。とのことでした。出産は約15年前です。
私自身は、不妊治療で人工授精陽性後の流産を2回経験して、習慣流産外来を受診後、不妊治療再開して第1子を総合病院で促進剤使用後の緊急帝王切開で出産、第2子は予定帝王切開で出産しました。出産後に高血圧になった以外は特に大きなトラブルはありませんでした。私が総合病院を選んだ理由は、近隣であり流産の手術で信頼関係が出来ていたためです。出産後は第1子は1歳児クラスで保育園に入れることができたので仕事復帰をしました。普通分娩から緊急帝王切開になったものの(なったからなのか)、よく何もなく出産子育てできて良かったと、今、振り返っています。
私ができるアドバイスはごく一般的ですが、以下の4点です。
・体制が整った病院を選ぶこと。持病が無い方でも出産時に母や赤ちゃんが大きなトラブルになったという話は普通に聞きます。万が一の時にすぐに対応できる病院で出産することを強くお勧めします。
・産後は、自治体のファミリーサポートや一時預かり、また宅配等を活用して、なるべく自身に負担をかけないこと。
・保育園も入れるようだったら、入れた方がいいです。
・ネントレ(ねんねトレーニング)は、とても役立ちました。今は何冊も本が出ていると思いますが、私は「赤ちゃん語がわかる子育て大全(トレーシー・ホッグ著)」がとても役立ちました。
